格付投資情報センター 国立大学法人の格付けについて
格付投資情報センターは、国立大学法人の格付けについてコメント(?)をだしています。
(格付投資情報センター/2006.09.07)(抜粋)格付投資情報センター(R&I)は、国立大学法人に格付けをしました。
東京大学をはじめとする国立大学は、2004 年4 月に法人化された。国の行政組織から離れて、それぞれの大学が法人格を持ったのである。国立大学法人法は独立行政法人通則法と共通する条項も多いが、教育・研究の拠点という大学の特性を反映して幾つかの点で違いがある。例えば、中期目標を定める際、文部科学大臣は国立大学法人の意見に配慮することになっている。
国立大学法人化と同時に、国立学校特別会計が廃止になり、各国立大学法人が固有の会計を有することになった。新しい制度は学生納付金や附属病院収入などの自己収入と国からの運営費交付金によって、人件費や物件費などの費用を賄う仕組みである。産学連携等研究収入や寄付金収入などの外部資金は、運営費交付金の算定に影響せず、外部資金の確保がインセンティブとして働く仕組みになっている。ただし、運営費交付金については大学設置基準に基づく教員にかかる給与費相当額を除く一般管理費および教育研究経費にはマイナス1%の効率化係数が、附属病院の収入に対しては2%の経営改善係数が適用になっており、それぞれの国立大学法人には経費の削減や増収の努力が求められている。
R&I では格付け上、国立大学法人は独立行政法人の一つの類型と整理している。中期目標や中期計画、年度計画を通した総務省や所轄庁によるモニタリングの仕組みは独立行政法人と類似点が多い。最終的には国が資金補填する可能性が高く、資金支援の規模や力強さ、安定感の差によって格付けにノッチ差が生じる。国立大学は特別会計の廃止と運営費交付金制度の設置という一連の制度変更があったものの、国にとって不可欠な教育や研究において中心的な役割を担っている。附属病院の収支悪化といったリスク要因を抱えているとはいえ、中期目標に基づいた経営が実現できている限りにおいて、所定の財源措置によって運営に支障をきたすことはないだろう。他の事業系の独立行政法人と比較しても、手がける事業の重要性や組織の普遍性は高い。結果として国立大学法人セクター全体の格付け水準は極めて高くなると考えている。
附属病院の整備等に際しては、施設整備費補助金のほか国立大学財務・経営センターから借り入れる仕組みが用意されている。国立大学法人は当面、この方法によって資金を取り入れることになるだろう。ただ、国立大学法人法では個別の国立大学法人による借り入れや債券発行も可能としている。国立大学法人法の制定時には資金使途をキャンパスの移転整備と附属病院整備に限っていたが、2005 年の施行令の改正で寄宿舎や産学連携施設の整備なども対象に含めた。借り入れや債券発行にあたっては文部科学大臣の認可が必要であるが、いずれ実行する国立大学法人が現れることも考えられる。