設置計画履行状況等調査の結果等について(平成26年度)
文部科学省は、
平成26年度の設置計画履行状況等調査の結果を公表しています。
なお、「設置計画履行状況等調査」は・・・
設置計画履行状況等調査(以下「アフターケア」という。)は、文部科学省令及び告示に基づき、大学の設置認可時等における留意事項及び授業科目の開設状況、教員組織の整備状況、その他の設置計画の履行状況について、各大学からの報告を求め、書面、面接又は実地により調査を行い、各大学の教育水準の維持・向上及びその主体的な改善・充実に資することを目的として実施するものである。
(文部科学省/2015.02.19)(一部抜粋)//平成26年度調査結果の概要//
全体としては、科目開設や教員配置など設置計画が着実に履行されており、変更がある場合も、相応の理由や止むを得ない事情があったものと認められる。しかしながら、一部には、設置計画を着実に履行する必要性に対する認識不足などを背景に、履行状況が不十分な大学が見られた。
特に、設置時に就任した教員が多数退職している、設置計画の教育課程を大きく変更しているというような、設置計画の履行という観点から、極めて不適切な事例も見られた。また、届出設置においては、大学の判断で教育課程や教員組織を整備することとなっているが、大学設置基準に対する認識の不十分さや計画時の準備不足から様々な問題が生じている大学もあった。
さらには、これまでの調査の結果、複数回にわたって留意事項を付しているにもかかわらず一向に対応が見られない、あるいは、対応しようという意識すら感じられない大学もあった。今年度からアフターケアの制度改正により、これまでの留意事項に変えて、内容に応じたレベル付けをした意見を付すこととなっており、このような大学には「是正意見」を付すこととなる。その結果として設置計画の履行状況が著しく不適当な状態に該当するとされれば、新たな認可がなされないこととなる可能性もある。しかし、これまでの留意事項に対応していない状況は、そもそも学生に不利益が生じていることを放置している状況であることから、制度改正の有無にかかわらず、意見への真摯な対応を強く求めたい。
今回のアフターケアの結果として、各大学に付した意見は別添2のとおりであるが、これらの意見は、今年度の調査時の大学の状況に基づき付したものであることを付言しておく。先に述べたように、「改善意見」は改善を強く求める事項であり、各大学の状況に応じたものであってその内容は様々であるが、多くの大学に付されている。「是正意見」は大学設置基準等の趣旨を踏まえた履行がされていないものや設置計画の不備等により学生への不利益が生じているもの、これまでのアフターケアにおいて改善を促してきた事項について不履行又は対応が不十分なもの等に付されている。本年度の調査を踏まえ、当該意見が付されている大学はもとより、その他の大学においても特に留意していただきたい点を以下にまとめた。
(入学定員管理)
○各大学は、様々な工夫の下で入学定員の充足に向けた取組を行っているが、当初計画時にニーズ調査や競合分析を行わず、入学定員を根拠なく設定したことから、学部学科等が開設して以来、入学定員の未充足が続いている大学も見られた。このため、各大学においては、学生や社会からのニーズを踏まえ、今後の入学定員の確保に向けた具体的な取組が求められる。
○他方、そもそも定員を管理する認識がなく、定員を超えた学生を受け入れることを前提としている大学や大幅に定員を超えた学生を受け入れていると判断せざるをえない対応をしている大学院には、法令を遵守する意識が低いと思われるため、根本的な認識を改めるべき「是正意見」が付されている。入学定員を大幅に超えた学生を受け入れた結果、学生の教育環境の質の低下が強く懸念される大学もあることから、入学定員を超過している各大学においては、それぞれの教育環境を踏まえた教育の質の確保を図るため、自ら定めた定員に基づいた学生数の管理を早急に行っていただく必要がある。
(教育課程等)
○アフターケア期間中にもかかわらず、設置計画時の教育課程を大幅に変更した大学、配当時期を変更し教育課程の体系性に疑義のある大学も見られた。このようなことは、設置計画の適切な履行及び設置計画そのものの妥当性の両面から大きな問題があるといわざるを得ないため、「是正意見」が付されている。学部等の設置にあたっては、中長期的な見通しや学部学科の理念に基づいた教育課程編成について十分に検討することが求められる。
○大学は教育上の目的を達成するために必要な授業科目を「自ら」開設していること(大学設置基準第19条)を前提として、大学以外の教育施設等における学修を、当該大学が開設している授業科目の履修と見なし単位授与をすることが法令上可能である。しかし、大学以外での学修を当該大学の授業科目の履修と見なすべき授業科目にその実態がない事例や、大学と短期大学の合併授業(共通科目)として開設した授業科目について、共同開設する教育研究上の合理的理由や教育の質の担保について確認できない事例があった。これらのことから、大学が自ら授業科目を開設することを定めた法令を理解していないことが懸念され、規定の趣旨に沿った適切な対応が求められる。
○キャップ制(単位の過剰登録を防ぐため、1年間又は1学期間に履修登録できる単位の上限を設ける制度)については、1年間の履修上限単位数が多すぎて、各年次にわたって体系的に授業科目を履修するという趣旨に必ずしも沿っていない事例も見られた。学士課程教育の質保証の観点から、授業時間にとどまらず授業のための事前の準備や事後の展開などの主体的な学びに要する時間を含め、十分な総学修時間の確保を促すことが重要であることから、各大学においては、法令に基づいた単位の実質化を図るための取組が求められる。
○看護学科をはじめとする医療系の学科における臨地実習について、特に届出設置を行った大学では、専任教員の配置計画が立てられていない、専任教員と実習施設の実習指導教員との連携不足、臨地実習において専任教員を補助する補助教員の質の確保等の設置計画の甘さが随所に見られた。届出設置であっても実習体制は設置当初から構築されるべきであり、その不十分さにより学生に与える影響も大きいことから「改善意見」を付されている事例があり、強く対応が求められる。
(教員組織)
○教員組織について、予定された専任教員が未就任や退職となったことにより、授業が未開講や開講時期の変更になるなど当初の理念や計画の実現性が懸念される大学や、教員の退職により大学設置基準に定めた必要専任教員数を下回るとみられる大学があるなど設置計画の着実な履行に対する認識が不足していると思われるような大学が見られた。また、届出により設置された学部等では、各大学の教員資格審査基準に基づき、大学の判断で教員組織を整備しているが、調査において教育研究業績を確認すると職位や科目を担当するに十分な業績が見当たらないと判断される事例もあり、「是正意見」が付されている。このように、各大学においては、教育研究上の目的を達成するための教員組織の整備に対する意識の向上及び教員資格審査基準の再考や適切な教員組織の整備のために必要な手続に関する学内関係者の理解の促進を図るための取組が求められる。
○定年規程に定める退職年齢を超える専任教員数の割合が高く、教育研究の継続性が懸念される大学も見られた。設置基準において教員の構成が特定の範囲の年齢に著しく偏ることのないよう配慮するものとされていることを踏まえ、適切な教員組織の構成が求められる。
(ファカルティ・ディベロップメント(FD))
○FDについては、様々な取組が行われているところであるが、教員の教育力向上という成果につながっていない事例があった。大学院においては、学部での活動に参加していることで十分としており、大学院独自のFDを行っていない大学もあり、「是正意見」が付されている。例えば、FDの一環として実施されている学生による授業評価については、評価結果が学生にフィードバックされておらず、授業評価がどのように活用され、どのように改善されているのか学生が確認できないといった事例も見られた。このため、各大学においては、評価結果について、学生等に対する公表等を通じて教員の教育改善への継続的な取組に活かしていくことが求められる。
(施設・設備)
○施設・設備については、各大学において、図書館及び体育館、運動場等の体育施設の整備等、教育研究に必要な施設・設備の充実が求められる。
大学においては、設置認可申請に係る書類、あるいは届出に係る書類は、「各大学が社会に対して着実に実現していく構想を表したもの」であることを十分認識するとともに、適切な対応をとるように改めて強く求めたい。
また、学生や社会からの多様な要請に応えるために、柔軟な組織改編等を行うことも重要ではあるが、各大学においては、組織改編等を検討する際、学位授与の方針(ディプロマ・ポリシー)、教育課程編成・実施の方針(カリキュラム・ポリシー)、入学者受入れ方針(アドミッション・ポリシー)を明確にし、学士課程教育として相応しく、ある程度、継続的に維持される組織改編等を期待したい。
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